| HPの質問コーナーをちょっと見て下さい。虫歯は遺伝するのでしょうか?という問い合わせがのっています。そのことに関して、最新の情報をお届けします。ご一読下さい。
原文は、九州大学大学院歯学研究院 口腔保健推進学講座小児口腔医学教授 中田稔氏が、去年の近畿北陸地区歯科医学大会において特別講演されたときのものです。引用させていただきます。
生物が集まると、そこにはさまざまな多様性が見られます。こうした多様性は個体差が集まって生じてくるのです。そのなかに正常と異常の違いや。病気の状態もふくまれることになります。怖い差は大きく遺伝要因と環境要因とによって決定されますが、その割合は様々です。
例えば、血液型のように、遺伝により100%決められるものや、偶発的な事故のように環境によるものもあれば、その両者が一定の割合で影響している場合もあります。病気の原因を明らかにし、予防方法や治療法を考えたり、その予後を推測するには、まず遺伝と環境の2つの要因がどのように関わっているかを知ることから始まります。
歯科的な異常や疾患はどうなっているのでしょうか。親子とも虫歯がひどくて、「むし歯は遺伝するのですか」と質問されたり、咬み合わせの問題で遺伝的なことをたずねられたりしたとき、個体差を決める遺伝と環境の役割についての知識があると、大変役に立ちます。
う蝕のように多因子性の場合、1個の遺伝子で親から子へう蝕が遺伝するということは無く、遺伝と環境の両者が相互に影響します。したがって、遺伝の割合が大きいのか?あるいは環境の方が大きく影響するのかが問題となります。
近縁関係にある個体程共通の遺伝子を持つ確立は高くなるので、近縁者はより類似しやすくなります。ここでは、遺伝の役割が強調されます。しかし一方で、近縁者は同じ環境条件のなかで生活することが多くなり、その為に類似しやすいということもあります。
親と子の間でう蝕が似るのは、次のようにいろいろな理由が考えられます。
1,歯の形や歯質が似ること
2,口の中の細菌の状態が似ること
3,唾液の性状や免疫性が似ること
4,食べ物の好みが似ること
親子やきょうだいよりももっと遺伝子の構成が一致する一卵性ふたごでは、う蝕は常に高い一致率を示すところから、う蝕のなり易さに遺伝子が大きく関係していると考えられます。
したがってう蝕予防処置というのはう蝕の発症原因のうち、環境要因をコントロールしているととらえます。そこで予防の効果が現れるにつれ、環境要因によるう蝕は減少し、それでもできるう蝕は主に遺伝要因によるものとみなすことが出来ます。
そろそろそんな時代がやってきたのではないでしょうか。遺伝に対する理解がますます重要となりつつあります。
おりしも、歯周病の原因菌ポルフィロモナス・ジンジバリスの遺伝子解析が成功したとほうどうされました。歯科疾患の原因がさらに明確にされ。宿主側の遺伝的感受性も明らかになることで、予防法や治療計画を個体毎のオーダーメイド方式で患者さんに提供する時代が直ぐそこに来ているのです。と同時に、歯や骨の発生過程も遺伝子レベルでの解析がどんどん進んでいますので、もともと人工材料を用いた修復を中心に展開してきた歯科医療が、生物学的な再生工学の応用によって生きた歯や骨を再生する手段に取って代わることも、今や夢でなくなったと云えます。
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