摂食障害のあなたへ 〜歯科医からのアドバイス〜

この記事は日本歯科医師会雑誌2014年10月号の大津光寛先生の「EatinngDisorder」論文からヒントを得て書きました。以前から過食嘔吐のことは歯科医として気になっていました。大津光寛先生の論文に共感し数回読ませていただきました。先生のように、配慮とやさしさをもって歯科医師として摂食障害の人たちの一助になりたいと思いました。
嘔吐という言葉に嫌悪感を覚える方には読みづらい記事です。あらかじめご了承下さい。

Flower 201503040110代に痩せたい!と思い詰めたこと、ありますよね?
永久歯が徐々に生えそろう小学校4,5年の頃から、それまで小食だった子供でも俄然モリモリと食べ始めます。
脳がほぼ出来上がったので、骨や筋肉や内臓をつくる段階にはいったからです。私も、お餅を8個食べたとか箱買いしてあるミカンを一度に10個は食べた記憶があります。中学校から帰ったらお腹ペコペコ。まずは炊飯器のふたをあけ、ご飯を食べたものでした。おかずはフリカケでもよかった。食事が待ち遠しい、食べることが楽しい。大学受験の頃は、香ばしいフランスパンにバターをたっぷりつけたのを齧りながら机に向かっていました。そして、18歳になった私は、食欲に任せて食べていたら素敵な服が着られないことに気付くのです。そして極端なダイエットを始めます。そう、食べないダイエットです。若いから思い詰めるので、数日食べなくても平気であっという間に3キロ、5キロと痩せてスッキリ。でも、身体は正直です。ミスドのドーナッツが食べたい、食べたい、食べたい、そればっかり。でも我慢、我慢、我慢。ある日、とうとう、ミスドのドアをあけます。そして、急いでおうちに帰り、まるで呑み込むようにドーナッツを食べてしまいました。ところが、いくら食べても満腹感が得られません。6個もドーナッツを食べてしまった後悔から、又食べない数日間。そして、それに続く爆食。
こんな経験、皆さんもありませんか?若いって、思い詰めるって、怖いですね。
普通の人は、これ無理!と諦めて、違う方法を模索します。私ってついつい食べちゃう凡人よね!って自嘲して。でも、冷静になればわかりますよね。拒食、絶食が生き物としてあり得ないことが。食べなければ死ぬんだから。

拒食症の人は、ある意味非常に意志の強い人、我慢強い人です。なぜ、そこまであなたは我慢できるのでしょう?
なにがあなたを追い込むのでしょう?拒食の先にあるのは何でしょう?食欲をコントロールできたあなたは、自信を得て他人と対等、あるいは優位に立った人間関係を築けるのでしょうか?まあ、それはそれとして・・・・
拒食は、過食、そして過食嘔吐につながっていくのが普通です。でないと、死んでしまうから。
妊娠して悪阻がくると、人によっては簡単に嘔吐します。それで嘔吐を覚えると、痩せたい人はこれなら食べても太らないと気づき、過食嘔吐がはじまるのでは?と考えます。或いは、簡単に吐ける特異体質なのでしょう。吐くというのは通常簡単に出来ませんから。
拒食症のひとは、家族が心配して病院に連れていきますが、過食嘔吐の人は、吐くという行為が恥ずかしいので病院には行かず、一人で抱え込んでしまいます。毎晩通うコンビニの店員さんと目をあわすのが怖いだけ。

でも、そんなあなた、歯は大丈夫ですか?胃液で歯が溶けますよ。お菓子をだらだら食べていたらむし歯ができますよ。耳の下あたりの喉は腫れていませんか?
楽に吐けるあいだは、多分過食嘔吐はやめられないでしょう。でも、いつか、やめられます。吐くってすごい体力を要するから、若い間だけです。段々吐けなくなっていきます。そして、あなたはもう頑張らなくてすむ。
過食嘔吐をしてしまう自分を嫌いにならなくてすむ。大丈夫、きっといつか、楽になれます。
早くそんな日がきたらいいですね。それまでは、歯を大切にしましょう。
守ることは、たくさん水を飲んでから吐くこと、そして、吐いた後何回も水でブクブクうがいや、ガラガラうがいをすることです。吐いた後スッキリしたくていっぱい歯磨きペーストをつけてゴシゴシ歯磨きしたら歯がすり減ってしまいます。気をつけましょう。
そして、相性のいい歯医者さんを見つけて、定期的にケアを受けてください。

大津光寛
日本歯科大学附属病院総合診療科准教授/同病院心療歯科診療センター併任

幼稚園園児の保護者様の疑問にお答えして

 川西市立多田幼稚園の歯科園医を32年務めさせていただいた経験は私にとりまして貴重な財産となりました。年に一回の歯科検診、歯磨き指導、保護者向け講話を続けてきました。そのような機会に園の先生方や保護者様と直に語りあうことで、リアルな幼稚園児の実態を知り、現状に即した具体的指導ができたことが、喜びでもありました。
多田幼稚園の園医を退任した今、舞台をこのHPに移して、より多くの幼稚園児の保護者様に、様々な歯やおくちに関する情報を知っていただきたいと思います。
保護者様の質問にお答えするスタイルで展開していきます。どうぞ、ご一読ください。

質問 1
質問: 乳歯の段階で結構歯が詰まっています。
このままだと、永久歯になった時に歯並びが悪くなってしまうのですか?
   
答え: はい。赤ちゃんから乳児、幼児と名前が変わり日に日に成長していきますが、乳歯は大きくなりません。
幼稚園児なのに乳歯が詰まったままということは、顎骨が成長していないと言うことです。
ところが、永久歯は乳歯より幅が広いですので当然収まらなくなってしまいます。

Qanda 1 Qanda 2 Qanda 3
幼稚園の年中・年長さんは、これくらい前歯に隙間があるのが理想です
Qanda 4
本来あるべき隙間がないと
Qanda 4 5
永久歯って
結構大きいでしょう?
Qanda 5
4.1歳   7.2歳

ご質問に対してのお答えは以上のようになりますが、それでは保護者様はガックリですね。
親としては、何とかできるだけ綺麗な歯並びの子に育ってほしいものです。
諦めてはいけません。年齢相応の隙間が出来てこないのにはきっと原因があるはずなので、それが何なのかが判れば、そしてその原因が解消できれば顎骨は育っていくのです。
では、よくある原因をみていきましょう

乳をのむから乳児といいます。どう乳をのむのでしょう。乳首を舌で吸啜窩に押し当ててしごくのです。
上唇は乳首をくわえやすい形に開き、舌も上向きです。

Qanda 6

この吸啜窩のくぼみが舌圧で前方に側方に押し広げられることで乳歯間に隙間ができてくるのです。
上あごに舌圧のかからない生活習慣・食習慣が歯並びを悪くするのです。

上あごに舌圧がかからない生活習慣って?
    口呼吸をしている 鼻が悪い ポカン口で唇を閉じていない
    キチンと立てていない、座れていない 何かにもたれている
    良い姿勢を躾けましょう

Qanda 7 Qanda 8 Qanda 9 Qanda 10

良い姿勢のイラストです。クリックすると大きくなるので参考にして下さい。

Qanda 11
 
Qanda 11 12
身体にあった
椅子選びも大切です。
椅子がぴったりだと
自然に良い姿勢になりますよ
Qanda 12

上あごに舌圧がかからない食習慣って?
    しゃべりながら、テレビをみながら、遊びながらの、ながら食べ
    お茶や、お汁での流し込み かまないで次々と呑み込むように食べる
    前歯で少しずつ食べる
    おやつが多くて主食を食べられない
このような些細なことの積み重ねが、舌圧を弱くしていくのです。

吸啜窩が伸びていかないもう一つの理由 それは、舌小帯異常にあり

「舌小帯」とは舌の裏側と口腔底をつないでいる小さいヒダです。
これが短かかったり太かったり付着部位が前方につくと、舌は動きを妨げられるので、発音が舌足らずになったり歯並びが悪くなってしまいます。

Qanda 28 Qanda 29

練習でのばすこともできますし、歯医者さんと相談して切ってしまう手もあります。
お相撲さんが稽古して股割りが可能になるように、一所懸命に練習すればきっと伸びますよ。

質問 2
質問: 牛肉の硬めのお肉が噛みきれない時があるので、噛みやすい鶏肉をよく食事に出し
また、硬いお肉やスルメ・ガムをかむことが顎を育てるわけではありません。幼稚園でも、鶏肉は柔らかいからダメですかという質問がありました。そんなことはないですよ。嵩(かさ)のあるものを奥歯で食べましょう。 てしまいます。もっと硬いお肉にチャレンジした方がいいですかこれまでの歯科検診で、あごが小さいため永久歯が生えれば矯正が必要と言われました。スルメやガムをなるべく食べるようにしていますが、他に何か良い食べ物や方法はありますか
   
答え: そんなことはないですよ。嵩(かさ)のあるものを奥歯で食べましょう。
そしてすぐに呑み込めない工夫をしましょう。 そしてすぐに呑み込めない工夫をしましょう。

Qanda 13

2013年に世界文化遺産に登録された日本食は低カロリーで栄養バランスも良く、噛みごたえもあります。
でも、作る側にしてみれば、時間も手間も費用もかかって大変ですね。ご飯にしらすやゴマを混ぜ込む、インスタントみそ汁でいいからモヤシやワカメなど具沢山にする、オカズを小さくしないなどの工夫で乗り切りましょう。

Qanda 14 Qanda 15 Qanda 16

矯正治療で歯科医に全てを委ねるという方法もありますが、立ち方・座り方・食べ方を6歳までに、優しく根気よく躾けることで、歯だけでなく姿勢や呼吸が良くなります。躾けるという字は、身体を美しく育てるということなのです。

質問 3
質問: 去年の講話で、うつぶせ寝がよくないと聞き、気付いた時は仰向けに寝かせなおしています。
でも気が付けばまたうつぶせ寝になっています。なにか良い方法はありませんか
   
答え: 実は、うつぶせ寝のお子様って、赤ちゃんの時から体重をグタッと預けるような抱っこをねだっていませんでしたか?歩けるようになっても、抱っこをおねだりしませんか?
日中起きているときも、何かにもたれる癖がありませんか?
要は、背中の骨や筋肉がまだしっかりしていないのかも。よく歩かせましょう。そして寝る前に体操かマッサージで背中を緩めてあげましょう。きっと日中曲がっている方に寝ているときも曲がっていますよ

Qanda 17 Qanda 18
同じ方向で抱っこしていると、寝る時も同じ向きになります。
頭重いですから顔も歪んできます。

質問 4
質問: 3歳過ぎまで指しゃぶりがひどく、おさまったと思っていたのですが4歳になってからは 爪噛みと、夜中寝ている時の指しゃぶりがひどいです。やめさせる方法はありますか?
   
答え: 指しゃぶりは歯並びを悪くしますね。爪噛みも舌癖も下あごをむやみに動かすのもホントにやってほしくないですね.昔みたいに土の上で遊ぶとか蝶や虫や草花を触ると、指しゃぶりできないけど、ビデオやテレビを室内で見ているとどうしても指や爪を口に入れてしまいます。外で遊ぶとか。おうちではお子様といっぱいお話してください。手を使った遊びとかお皿拭き、窓みがきを一緒にするのもいいですね

Qanda 19
八木歯科の患者様がお子様にこんな可愛いミトンを作って夜間の指吸い防止に努められていました。感動しました。

質問 5
質問: 歯はいつ頃抜けるのが良いですか?早すぎても遅すぎてもよくないですか?
永久歯になってからの歯並びが心配です。 永久歯に生え変わってから歯並びが悪い場合、どの段階で矯正すればよいですか。 前歯がすきっ歯なのですが
   
答え: 前歯の隙間は自然につまることもあります。すきっ歯なら、口呼吸ではないでしょうか?口を閉じて食べるとか鼻呼吸をこころがければきれいに並ぶ可能性は高いです。又標準的な生え変わりの時期は以下の通りです。でも、奥歯でしっかり噛んでいないと生え変わりは遅くなることがわかっています。生え変わりの時期になったら、3,4か月ごとの歯科検診をしっかり受診しましょう。レントゲンも撮りましょう。
レントゲン写真には今後に向けての様々な情報が詰まっています。

Qanda 20
個人差があり乳歯で3〜6ヶ月位、永久歯で1〜2年位異なる事があります。

Qanda 21
6歳児のパノラマ写真
乳歯の下に永久歯がスタンバイしています。
ごはんをいっぱい食べてしっかり眠ってキチンと育ててあげましょう。

Qanda 22
さて、どこが変でしょう?
乳歯と永久歯の間に、過剰な歯がありますね
定期的に検診することで、この過剰歯の適切な抜歯の時期がわかるのです。知っていれば過剰歯も怖くありませんね

質問 6
質問:
  • 歯磨き粉をつけて歯磨きをさせた方がいいのでしょうか
  • 歯磨きの最中に歯磨き粉を飲み込みそうでまだ使用していません。早い目に 使用を始めた方が良いですか
  • 歯磨き+洗口液の方が予防には効果がありますか
  • 仕上げ磨きをしているのですが、朝起きた時など口の臭いが気になります
  • 歯磨き粉を使っていないせいか、口臭が少し気になります
  • 口内炎ができやすい (歯ブラシが強くあたっているのか)
  • 歯磨きをしても口臭があるのは、ちゃんと磨けてなくて、虫歯があるからですか
   
答え: お子様の口臭に関する質問が多いですね。むし歯があれば当然口臭がありますが、むし歯がないのに口臭がするのは、そのほとんどが口呼吸によるものです。
又、歯磨きペーストですが、少しくらい呑み込んでも心配いりません。でも、ペーストを必ず使う必要も
ありません。フッ素入りの洗口液は効果ありです。ブクブクうがいです。ガラガラうがいは風邪予防です

Qanda 23 Qanda 24

歯磨きのコツとしては、以下のようなことに気をつけましょう

  1. 眠くなる前に、みがく お風呂でみがく
  2. 1分でみがく
  3. 歯磨き剤は使っても使わなくてもOK 歯ブラシは水で湿らせてから
  4. カシャカシャしない 小刻みにクルクルと
  5. 赤ちゃんは ガーゼ拭いと糸ヨージ

歯が生えたら歯医者さんに行ってみましょう。行ってみないとお子様も歯医者さんに慣れません。慣れたら歯を削ることなくシーラントというむし歯予防も保険治療で行えます。歯科治療は歯磨き指導や、フッ素塗布、シーラントから始めましょう

Qanda 26 Qanda 4 5 Qanda 27

シーラントについては< 2012年の記事 >、姿勢については< 2009年の記事 >に、詳しく記載しています

歯は転ばぬ先の“杖” 〜 要介護にならないために 〜

65 歳を過ぎても、生き生きと元気に暮らすためには、健康が大切ですね。元来丈夫な人でも、60 年生きてきた ら、腫れ物やデキ物が出現して、血流が滞ったり、歯や骨や関節が磨り減ったり、色々と嘆きの種が増えますね。 死亡原因上位の癌・循環器疾患などは予防と早期発見で乗り切りましょう! それと気をつけたいのが要介護状態にならないこと!寝たきりの原因として、「脳卒中」「高齢による衰弱」「転 倒・骨折」があげられます。ということは、転ばないこと、転んでも骨折しない丈夫な体を維持することも欠か せません。

全国保険医団体連合会から毎月送付される雑誌にわかりやすいデータがありましたので、ここで紹介します。転 倒を防いで、ある意味怖い認知症のリスクを防ぐにはしっかりかみましょうという記事です。

image001

●咀嚼と記憶・学習能力

  1. 咀嚼刺激によって記憶の向上が高齢者で見られた。
  2. 咀嚼刺激は大脳皮質のネットワークに適度な刺激を
    与えて、海馬への情報入力に促通効果をもたらしてい
    ると考えられる。
  3. 咀嚼は知的機能を保持し健康に老いるためにきわめ
    て重要である

※海馬は記憶や空間学習能力に関わります。
日常的な出来事や勉強して覚えた情報は一時的に海馬にファイルされ整理整頓されてから大脳皮質にためられる
らしい

●認知症高齢者のかみ合わせの有無と転倒回数

これは、たとえ歯を失っても、義歯をいれて奥歯がしっかりかみあわされば、転びにくいというデータです。 歯と背骨を含む全ての骨とは連携しているのですね。

image003image002


image004

●高齢者の歯の状態と日常生活

■歯がたくさん残っている高齢者は元気。

■入れ歯も歯もない高齢者は寝たきりが多い。

ところで、入れ歯の寿命ですが、長く使えば磨り減ります。でも、磨り減りに気がついていない方がとても多い のが気になります。入れ歯が磨り減ると自分の歯に負担がかかってきて、さらに歯を失う原因になってしまいま す。定期的検診で入れ歯もチェックしましょう。高価な入れ歯を 20 年使い続けるより、保険の範囲内の入れ歯 を半年毎に修理したり、数年使ったら新しく作り直すほうが、快適なかみあわせを維持できます。

痛くもかゆくもない下顎隆起ですが、 「下顎隆起の人類学」 という論文が発表されました

140420_01[1]

140420_02[1]

下顎隆起:下顎骨の内面にできる骨隆起 多くの場合は両側性 大きさや形は様々 現代の日本人の半数以上にある 若い頃には小型で痛みもなくその存在に気がつかないが、加齢と共に徐々に大きくなる 基本的に日常生活に支障はない

生物としてのヒトの進化(時間的変化)と変異(地理的変異)を研究するのを、人類学というそうです。 その人類学の見地から下顎隆起を調べた論文が日本歯科医師会雑誌に掲載されましたので、要約しました。

歯周病菌は、血液の流れに乗って全身に運ばれていき、臓器や血管壁にたどり着きます。そして、内毒素(エンドトキシン)を遊離させるなどの毒性を発揮し、炎症を引き起こします。中でも心臓や脳、子宮などへ及ぼす影響が詳しく解明されつつあります。 困ったことに、「気道」からも吸い込まれて「肺」にも甚大な影響を与えます。

下顎隆起は、考古遺跡から発掘される人骨や猿人にも見られる。現代人の場合は、北域に頻度が高いという地域差がある。温かい地域でもタイ・ベトナム・日本は出現頻度が高い。

下顎隆起の成因

遺伝因子: グリーンランドに住むエスキモーとノースマン(ヴァイキングの子孫)では出現頻度が違う
環境因子: 遺伝的に同じカナダ東北部のエスキモーの場合、欧米化された食品を食べる人より伝統食を食べる人が下顎隆起を高頻度で有した。食性が関与しているという仮説が提示された

 

日本列島の人々を対象に縄文時代から現代まで、下顎隆起の出現頻度が時代と共にどのように変化したかの 調査の分析
下顎隆起の出現頻度は、弥生時代から近代までは低いが、縄文時代人と現代人において高頻度で現れ、発達した。 そして、隆起はこの100年ほどの現代において突出している

近・現代人について下顎隆起の出現頻度の年齢を調べた結果、下顎隆起は、12歳以降で発現し、年齢とともに 20歳代まで発現頻度は増加する。その後は、年を取れば取るほど下顎隆起は発達する

下顎隆起の位置は現代人では前から4本目に多く見られる。 “親知ず”を有する古代人においては前から5本目に多い。

著者は、下顎隆起の頻度が縄文時代人で高く弥生時人で低いという点に注目する。遺伝的に見ると弥生人は縄文 時代人と渡来人の遺伝子の両方を持った人々である。
したがって、弥生時代に下顎隆起の出現頻度が低下したのは、渡来人が遺伝的に下顎隆起を発現しにくい人々であったと解釈することができる
つまり、下顎隆起の発現に遺伝因子が関与していることが示唆されている
ちなみに、この仮説を検証するために渡来人の故郷と考えられる朝鮮半島や中国大陸の人々を調査する必要が ある。
これは今後の課題一方、弥生時代以降は、日本では遺伝子に関与する大きな変化はなかったにもかかわらず、現代になって下顎 隆起の出現頻度がとても高くなった理由は、遺伝的要因からは説明できない
では、下顎隆起の発現を促すもう一つの原因、環境因子はどうであろうか

これまでの研究から、下顎隆起に影響を及ぼす環境因子としては、下顎骨にかかる負荷が考えられる。

 

     
  下顎骨にかかる負荷  
      ①咬合圧の大きさ: 食物の硬さ 口腔内環境
      ②咬合圧の働く期間: 年齢
     
  口腔内環境としては  
        歯の数  
        歯の位置異常  
        咬耗量  
        顎関節異常  
        歯ぎしりなどの習慣  
     

 

下顎隆起と環境因子の相関
縄文時代:咬耗量が下顎隆起の発達と正に相関
弥生時代:有意な相関を持つ環境因子は無い
鎌倉時代:咬耗量は下顎隆起と相関・歯数が減ると隆起は増えた
近代現代:歯数・咬耗量・年齢が隆起と正に相関

このデータからよめることは
日本人は、噛めば噛むほど、そして噛む力が大きい方が下顎隆起が出現しやすい歯の数が少ないと、噛む力が偏って同じ歯に集中して下顎隆起が大きくなる

注目すべきは、下顎隆起が、現代人に高頻度であらわれることである。
人類学的に、下顎隆起=噛む力=咬合力の増大というデータが示された意味は大きい

硬い食材もとっていないのに、咬合力の負荷が増大しているとは、何なのかもちろん、稀にみる長寿国であることは否めない。
今までになく長い年月にわたり咀嚼活動を続けるのである。
現代人の下顎には、咬合圧は左程でもないが、長い期間にわたり負荷がかかり続けるということなのだ。
また、食事・会話・嚥下などの生活上必要な咬合以外の、TCH(上下歯列接触癖)やブラキシズムによる持続的で 大きな咬合圧も関与しているはずである。
下顎隆起のある人は自らのTCHやブラキシズムを疑っていただきたい。

※上記の文章は、2013年4月号の日本歯科医師会雑誌に掲載された
「下顎隆起の人類学」  著者 五十嵐百合子(日本大学松戸歯学部講師)
を、八木が要約しました。

2014年最新! 歯周病と全身疾患について

2008年の歯科情報「歯周病菌は全身を駆け巡る」は当時、石川烈先生が発表された論文を解説したものです。

歯周病菌は、血液の流れに乗って全身に運ばれていき、臓器や血管壁にたどり着きます。そして、内毒素(エンドトキシン)を遊離させるなどの毒性を発揮し、炎症を引き起こします。中でも心臓や脳、子宮などへ及ぼす影響が詳しく解明されつつあります。 困ったことに、「気道」からも吸い込まれて「肺」にも甚大な影響を与えます。

この記載についての論拠がこれです。

 

140302_01[1]

 

英語の得意な方は読めばお解かりでしょう。
Platelets血小板とは血液に含まれる細胞成分の一種で血管が損傷したときに集合してその傷口をふさぎ止血作用をもつものです。
Pg(ポルヒィノモラスジンジバーリス)という代表的な歯周病菌は血小板に潜り込める、そしてより大きな凝集体をつくることを示した図です。

 

140302_02[1]

 

しかし、血管内壁の損傷に対して血小板が凝固作用すると血管壁はぶ厚くなり動脈硬化を起こしてしまいます。
その箇所の血管内壁にできたぶ厚いものが血流にこすられてはがれて、細い血管の集まった脳や心臓でつまると脳梗塞、心筋梗塞を起こすのです。
脳梗塞や心筋梗塞は死亡原因の上位にあり、運動不足、過食などが原因のコレステロール上昇で血管が詰まることによるとされる生活習慣病ですが、歯周病が関与するとそのリスクが高まるわけです。
糖尿病との関連については、歯周病菌の直接の影響だけでなく、歯肉に慢性的に炎症が存在することが関係していることが明らかになっています。その関係とは

 

140302_03[1]

 

この図のポケットとは歯肉の遊びの部分のことで通常は1~2mmですが、4mmになると、うじゃうじゃどろどろした潰瘍面積はてのひら分になります。

 

140302_04[1]

 

 

その炎症部分から絶え間なく流れでる炎症関連物質が糖尿病を悪化させたり、早期切迫流産の原因になります。
どうでしょう?これらのデータは昨年の日本歯科医師会のセミナーからのものです。わかりやすいですね。
生活習慣病である心疾患、脳血管疾患、糖尿病はやはり加齢に伴い深刻になってきます。運動や食生活の改善が第一ですが、きちんと歯磨きをすること、そしてかかりつけの歯科医院をもち定期的に衛生士による専門的なケアを受けることもかかせないことがおわかりいただけましたでしょうか。