歯は転ばぬ先の“杖” 〜 要介護にならないために 〜

65 歳を過ぎても、生き生きと元気に暮らすためには、健康が大切ですね。元来丈夫な人でも、60 年生きてきた ら、腫れ物やデキ物が出現して、血流が滞ったり、歯や骨や関節が磨り減ったり、色々と嘆きの種が増えますね。 死亡原因上位の癌・循環器疾患などは予防と早期発見で乗り切りましょう! それと気をつけたいのが要介護状態にならないこと!寝たきりの原因として、「脳卒中」「高齢による衰弱」「転 倒・骨折」があげられます。ということは、転ばないこと、転んでも骨折しない丈夫な体を維持することも欠か せません。

全国保険医団体連合会から毎月送付される雑誌にわかりやすいデータがありましたので、ここで紹介します。転 倒を防いで、ある意味怖い認知症のリスクを防ぐにはしっかりかみましょうという記事です。

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●咀嚼と記憶・学習能力

  1. 咀嚼刺激によって記憶の向上が高齢者で見られた。
  2. 咀嚼刺激は大脳皮質のネットワークに適度な刺激を
    与えて、海馬への情報入力に促通効果をもたらしてい
    ると考えられる。
  3. 咀嚼は知的機能を保持し健康に老いるためにきわめ
    て重要である

※海馬は記憶や空間学習能力に関わります。
日常的な出来事や勉強して覚えた情報は一時的に海馬にファイルされ整理整頓されてから大脳皮質にためられる
らしい

●認知症高齢者のかみ合わせの有無と転倒回数

これは、たとえ歯を失っても、義歯をいれて奥歯がしっかりかみあわされば、転びにくいというデータです。 歯と背骨を含む全ての骨とは連携しているのですね。

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●高齢者の歯の状態と日常生活

■歯がたくさん残っている高齢者は元気。

■入れ歯も歯もない高齢者は寝たきりが多い。

ところで、入れ歯の寿命ですが、長く使えば磨り減ります。でも、磨り減りに気がついていない方がとても多い のが気になります。入れ歯が磨り減ると自分の歯に負担がかかってきて、さらに歯を失う原因になってしまいま す。定期的検診で入れ歯もチェックしましょう。高価な入れ歯を 20 年使い続けるより、保険の範囲内の入れ歯 を半年毎に修理したり、数年使ったら新しく作り直すほうが、快適なかみあわせを維持できます。

痛くもかゆくもない下顎隆起ですが、 「下顎隆起の人類学」 という論文が発表されました

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下顎隆起:下顎骨の内面にできる骨隆起 多くの場合は両側性 大きさや形は様々 現代の日本人の半数以上にある 若い頃には小型で痛みもなくその存在に気がつかないが、加齢と共に徐々に大きくなる 基本的に日常生活に支障はない

生物としてのヒトの進化(時間的変化)と変異(地理的変異)を研究するのを、人類学というそうです。 その人類学の見地から下顎隆起を調べた論文が日本歯科医師会雑誌に掲載されましたので、要約しました。

歯周病菌は、血液の流れに乗って全身に運ばれていき、臓器や血管壁にたどり着きます。そして、内毒素(エンドトキシン)を遊離させるなどの毒性を発揮し、炎症を引き起こします。中でも心臓や脳、子宮などへ及ぼす影響が詳しく解明されつつあります。 困ったことに、「気道」からも吸い込まれて「肺」にも甚大な影響を与えます。

下顎隆起は、考古遺跡から発掘される人骨や猿人にも見られる。現代人の場合は、北域に頻度が高いという地域差がある。温かい地域でもタイ・ベトナム・日本は出現頻度が高い。

下顎隆起の成因

遺伝因子: グリーンランドに住むエスキモーとノースマン(ヴァイキングの子孫)では出現頻度が違う
環境因子: 遺伝的に同じカナダ東北部のエスキモーの場合、欧米化された食品を食べる人より伝統食を食べる人が下顎隆起を高頻度で有した。食性が関与しているという仮説が提示された

 

日本列島の人々を対象に縄文時代から現代まで、下顎隆起の出現頻度が時代と共にどのように変化したかの 調査の分析
下顎隆起の出現頻度は、弥生時代から近代までは低いが、縄文時代人と現代人において高頻度で現れ、発達した。 そして、隆起はこの100年ほどの現代において突出している

近・現代人について下顎隆起の出現頻度の年齢を調べた結果、下顎隆起は、12歳以降で発現し、年齢とともに 20歳代まで発現頻度は増加する。その後は、年を取れば取るほど下顎隆起は発達する

下顎隆起の位置は現代人では前から4本目に多く見られる。 “親知ず”を有する古代人においては前から5本目に多い。

著者は、下顎隆起の頻度が縄文時代人で高く弥生時人で低いという点に注目する。遺伝的に見ると弥生人は縄文 時代人と渡来人の遺伝子の両方を持った人々である。
したがって、弥生時代に下顎隆起の出現頻度が低下したのは、渡来人が遺伝的に下顎隆起を発現しにくい人々であったと解釈することができる
つまり、下顎隆起の発現に遺伝因子が関与していることが示唆されている
ちなみに、この仮説を検証するために渡来人の故郷と考えられる朝鮮半島や中国大陸の人々を調査する必要が ある。
これは今後の課題一方、弥生時代以降は、日本では遺伝子に関与する大きな変化はなかったにもかかわらず、現代になって下顎 隆起の出現頻度がとても高くなった理由は、遺伝的要因からは説明できない
では、下顎隆起の発現を促すもう一つの原因、環境因子はどうであろうか

これまでの研究から、下顎隆起に影響を及ぼす環境因子としては、下顎骨にかかる負荷が考えられる。

 

     
  下顎骨にかかる負荷  
      ①咬合圧の大きさ: 食物の硬さ 口腔内環境
      ②咬合圧の働く期間: 年齢
     
  口腔内環境としては  
        歯の数  
        歯の位置異常  
        咬耗量  
        顎関節異常  
        歯ぎしりなどの習慣  
     

 

下顎隆起と環境因子の相関
縄文時代:咬耗量が下顎隆起の発達と正に相関
弥生時代:有意な相関を持つ環境因子は無い
鎌倉時代:咬耗量は下顎隆起と相関・歯数が減ると隆起は増えた
近代現代:歯数・咬耗量・年齢が隆起と正に相関

このデータからよめることは
日本人は、噛めば噛むほど、そして噛む力が大きい方が下顎隆起が出現しやすい歯の数が少ないと、噛む力が偏って同じ歯に集中して下顎隆起が大きくなる

注目すべきは、下顎隆起が、現代人に高頻度であらわれることである。
人類学的に、下顎隆起=噛む力=咬合力の増大というデータが示された意味は大きい

硬い食材もとっていないのに、咬合力の負荷が増大しているとは、何なのかもちろん、稀にみる長寿国であることは否めない。
今までになく長い年月にわたり咀嚼活動を続けるのである。
現代人の下顎には、咬合圧は左程でもないが、長い期間にわたり負荷がかかり続けるということなのだ。
また、食事・会話・嚥下などの生活上必要な咬合以外の、TCH(上下歯列接触癖)やブラキシズムによる持続的で 大きな咬合圧も関与しているはずである。
下顎隆起のある人は自らのTCHやブラキシズムを疑っていただきたい。

※上記の文章は、2013年4月号の日本歯科医師会雑誌に掲載された
「下顎隆起の人類学」  著者 五十嵐百合子(日本大学松戸歯学部講師)
を、八木が要約しました。

2014年最新! 歯周病と全身疾患について

2008年の歯科情報「歯周病菌は全身を駆け巡る」は当時、石川烈先生が発表された論文を解説したものです。

歯周病菌は、血液の流れに乗って全身に運ばれていき、臓器や血管壁にたどり着きます。そして、内毒素(エンドトキシン)を遊離させるなどの毒性を発揮し、炎症を引き起こします。中でも心臓や脳、子宮などへ及ぼす影響が詳しく解明されつつあります。 困ったことに、「気道」からも吸い込まれて「肺」にも甚大な影響を与えます。

この記載についての論拠がこれです。

 

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英語の得意な方は読めばお解かりでしょう。
Platelets血小板とは血液に含まれる細胞成分の一種で血管が損傷したときに集合してその傷口をふさぎ止血作用をもつものです。
Pg(ポルヒィノモラスジンジバーリス)という代表的な歯周病菌は血小板に潜り込める、そしてより大きな凝集体をつくることを示した図です。

 

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しかし、血管内壁の損傷に対して血小板が凝固作用すると血管壁はぶ厚くなり動脈硬化を起こしてしまいます。
その箇所の血管内壁にできたぶ厚いものが血流にこすられてはがれて、細い血管の集まった脳や心臓でつまると脳梗塞、心筋梗塞を起こすのです。
脳梗塞や心筋梗塞は死亡原因の上位にあり、運動不足、過食などが原因のコレステロール上昇で血管が詰まることによるとされる生活習慣病ですが、歯周病が関与するとそのリスクが高まるわけです。
糖尿病との関連については、歯周病菌の直接の影響だけでなく、歯肉に慢性的に炎症が存在することが関係していることが明らかになっています。その関係とは

 

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この図のポケットとは歯肉の遊びの部分のことで通常は1~2mmですが、4mmになると、うじゃうじゃどろどろした潰瘍面積はてのひら分になります。

 

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その炎症部分から絶え間なく流れでる炎症関連物質が糖尿病を悪化させたり、早期切迫流産の原因になります。
どうでしょう?これらのデータは昨年の日本歯科医師会のセミナーからのものです。わかりやすいですね。
生活習慣病である心疾患、脳血管疾患、糖尿病はやはり加齢に伴い深刻になってきます。運動や食生活の改善が第一ですが、きちんと歯磨きをすること、そしてかかりつけの歯科医院をもち定期的に衛生士による専門的なケアを受けることもかかせないことがおわかりいただけましたでしょうか。