老いない技術 2 生涯健康に向けて、今やるべきこと

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人は誰でも歳を取り、歳とともに体力が弱り病気を生じがちとなりますが、これらのマイナス面を少なくし、遅くすることによって生涯にわたって健康で過ごしたいものです。そのためには、「老化」という相手を知ることが大切で、遺伝的な原因や酸素を吸って生きていることが老化を進行させているのであることや人間には限界寿命のあることを知っておく必要があります。したがって、老化に100%逆らうのではなく、歳とともに進行する老化を認めながら、その進行を抑えたり、老化に伴う病気の発生を予防することが快適なセカンドライフにとって大切です。そのために私たちが日常の生活の中で「やるべきこと」は単純な二つが中心となります。それは食べる、動く、の二点です。

動くことの大切さはトレーニングによる老化抑制効果として述べました。食べることの大切さは咀嚼力の大切さ、血液中のアルブミン値を増やすほうがよい、多くの食品を摂るほうがよい、適正な体重維持がよい、などいろいろな項で記述してきましたが、それらをまとめて・・・

 

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老化を遅らせるための食生活指針

  1. 3食のバランスをよくとり、欠食は絶対さける
  2. 動物性たんぱく質を十分に摂取する
  3. 魚と肉の摂取は1:1程度の割合にする
  4. 肉は、さまざまな種類を摂取し、偏らないようにする
  5. 油脂類の摂取が不足しないように注意する
  6. 牛乳は、毎日200ml以上飲むようにする
  7. 野菜は、緑黄色野菜、根野菜など豊富な種類を毎日食べる
    火を通して摂取量を確保する
  8. 食欲がないときはとくにおかずを先に食べごはんを残す
  9. 食材の調理法や保存法を習熟する
  10. 酢、香辛料、香り野菜を十分に取り入れる
  11. 調味料を上手に使いおいしく食べる
  12. 和風、中華、洋風とさまざまな料理を取り入れる
  13. 会食の機会を豊富につくる
  14. かむ力を維持するため義歯は定期的に点検を受ける
  15. 健康情報を積極的に取り入れる

 

これは東京都老人総合研究所で熊谷先生らがまとめられました、老化を遅らせるための食生活指針です。この食生活指針は老人総合研究所で多くの高齢者を観察して得られた結果をまとめたものです。

指針では肉類・油脂類・牛乳を勧めていますが、東京都民について東京都老人総合研究所におられた熊谷先生は、

① 植物性食品を高頻度に摂る習慣のある高齢者
② 肉・油脂類・牛乳を高頻度に摂る習慣のある高齢者
③ ご飯・みそ汁・漬物を高頻度に摂る習慣のある高齢者

の三群を比較しています。比較する項目としては余暇活動、創作など知的能動性が歳を取ってどの程度低下するかを見ています。③ご飯・みそ汁群に対して①植物性食品群のほうが、さらに②肉・油脂類群の高齢者のほうが余暇・知的活動を続けて新聞や本を読み、年金の手続きができて健康情報を入手できる高齢者が多くいました。

肉類をたくさん摂取して血清アルブミン値を4.3㎎/dl以上に保っている女性では3.8㎎/dl以下の女性に比べて心臓病の発生・死亡の割合が4割近くに低下することが海外の研究で明らかにされています。

また、国内の山村の調査で血清アルブミン値が4.3㎎/dl以上の高齢者は4.0㎎/dl以下の高齢者に比べて歩行速度の低下が約40%も少ないことが分かっています。

多くの食品を摂取する男性の生命予後がよいこと、摂取食品数が多い高齢者では知的能動性の低下する高齢者の割合や、社会的役割が低下する高齢者の割合が約6割も少なくなっています。

 

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このようなデータを基に2年間にわたって有料老人ホームの居住者44人に対して「老化を遅らせるための食生活指針」に沿った形で食事指導をした結果、介入群では体格指数(BMI)が1.0近く改善しています。一方、介入しなかった133人については2年後には体格指数が低下して22を下回っていました。その他、血清アルブミン値についても44例の介入群では明らかに上昇して平均値が4.0㎎/dlを上回っていました。介入しなかった対照群では血清アルブミン値が低下していました。高齢者は加齢に伴い体格指数、血清アルブミン値などが低下し。徐々に体力を失っていきますが食事の注意で老化を遅らせ健康的な体にしたことになります。

生涯にわたり健康長寿を維持するために適度な運動と積極的な食事とを車の両輪のような形で作用させ、食事・運動といった生きていく上での基本的な行動に留意することが、生涯健康に向けて今やるべきことといえます。

 

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以上の記事は、祥伝社新書出版「老いない技術」(著者:林泰史)を
参考にしました。

TCH そしてVBT作業が顎関節症の 発症・持続・悪化に与える影響

TCH:Tooth Contacting Habit 上下歯列接触癖

2008年2月に日本歯科医師会雑誌で東京医科歯科大学の木野孔司准教授が発表

VDT作業:Visual Display Terminal (携帯電話やパソコンの画面を前にして行う作業)

顎関節症:顎関節や咀嚼筋の疼痛、顎関節音、開口傷害、顎運動異常を主要症状とする慢性疾患群の総括的診断名であると定義されており、症状としては、「顎関節雑音」、「顎関節・咀嚼筋の機能時疼痛」、「開口障害」を特徴としている。

上記の症状を訴えて来院するのは、20~30歳代最も多く、その後の年代では患者数は減少するタイプの疾患である。
顎関節症は、虫歯や歯周病のような細菌感染は関与しないし病気でもない。
永久歯が生えそろった時点で、噛み合わせがよくない、片噛みで顎関節や咀嚼筋に左右差が生じた・ストレス・睡眠時の無自覚な歯ぎしりや噛みしめ・習癖などの様々な要因が関係する「多因子疾患」である。
個々の因子が積み木のように重なって、生体の耐久力を超えてしまうと顎関節症が発症する。

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数ある寄与因子の中でも、顎関節や咀嚼筋に加わる”力”の影響が少なくない。これらの力は咀嚼や会話、嚥下などの機能的”力”と本来は必要ないであろう非機能的”力”に分けられる。
顎関節や咀嚼筋は食べる・話す・飲み込むときの下顎の”動き”に関与する。
特に食べる時に食物の粉砕・すり潰しに力を使うが、”力”の生じている時間は1回の咀嚼で1秒以下であり、3~5kg程度といわれる。又、1日におけるこのような機能的な上下の歯の総接触時間の総量は平均17.5分とされている。
そして、食べる・話す・嚥下する際に、下顎は開閉の繰り返しであり、持続的に顎関節や咀嚼筋に”力”がかかり続けることはない。
そこでクローズアップされるのが

TCH:上下の歯または歯列を持続的に接触させる習癖行動

であり、痛みを伴う顎関節症患者の60~70%がこのTCHを持っているとされ、この持続的な”力”こそが、顎関節と咀嚼筋に不自然で不慣れな状況を生じさせている。
非機能的な、ブラキシズムと総称される持続的な”力”として、睡眠時ブラキシズムがあるが、これは「ナイトガード」(医療保険で約7,000円)を作成・装着することでその破壊力から顎関節や咀嚼筋の緊張・歯や歯周のダメージを防ぐことが可能である。
ただ、近年携帯電話やPCの”画面”を相手にした作業が増えている。この画面のことをVDT:Visual Display Terminal と呼び、これを用いた作業をVDT作業という。
厚生労働省が平成14年に「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を発表している。
VDT作業の伴う身体症状としては、眼精疲労、頭痛、首や肩ら背中の痛みなどが中心で顎関節症についての報告はないが筋肉骨格系の一部であることからVDT作業の影響を受けるものと考えられる。実際、約2,000人のデータ分析でVDT作業時間の延長と顎関節症の関連が示された。
また、VDT作業はメンタルヘルスや自律神経系にも影響をもたらすといわれ、ストレスにより覚醒時ブラキシズムは増加するというデータがある。

 

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解決方法としては、まずTCHがあるかどうかの気付き、そして接触を止めることに尽きる。
また、VDT作業においては、深い呼吸と良い姿勢をこころがけ、適切な休憩をとり軽いストレッチをとりいれることを心がけたい。

上記の文章は2013年5月号日本歯科医師会雑誌から引用しました。
論文の著者:西山 暁 氏 (東京医科歯科大学顎関節治療部外来医長)

TCHに関しましては、「次世代の顎関節症治療を考える会」のHPから引用しました。

何もしていないとき人間の上下の歯は接触していません。くちびるを上下閉ざしていても上下の歯は触っていないのです。本来上下の歯は会話、食物の咀嚼、食物の嚥下という動作をするときに瞬間的に触るだけです。ですから接触時間を加えていって1日ためても20分以下です。
 ところが、何かの作業をしているとき、考え事をしているとき、テレビを見ているときなどに上下の歯を触らせたままにしている人がいます。たとえ強くかんでいなくとも、上下を軽く接触させただけで口を閉じる筋肉は働いてしまうのです。

ですから、上下触らせていると、その間筋肉は働き続けてしまいます。接触時間が長時間になれば筋肉は疲労してきます。また口を閉じる筋肉が働くと、顎関節は押えつけられることになるため、長時間になると関節への血の巡りが悪くなり、丁度正座していて足がしびれたときと同じように、感覚が敏感になって痛みを感じやすくなってしまいます。

 この不必要な上下の歯の接触という癖(Tooth Contacting Habit (TCH)と名付けました)が多くの患者さんに見られたため、この癖の是正をしていただきました。すると,他の治療を何もしていないのに症状が消える方が多数いらっしゃったのです。つまりこのTCHが症状を作り出すうえでの大きな役割をになっているということが分かってきたのです。

【TCHの改善法】

TCHはテレビを見ている時や長時間パソコンをしている時などに起こりやすいので、テレビやパソコンの隅に何らかのシールや写真などを貼っておき、それを見たら上下の歯が接触していないかどうかを確認し、もし接触していたら離すということを繰り返すという方法があります。(リマインダー)
ただし、TCHを意識しすぎるとそれがかえって疲労感を作ってしまうこともありますので、四六時中TCHを意識して生活するのではなく、リマインダーを見たりTCHにふと気づいた時に歯を離すようにすることが推奨されています。
TCHの是正は器具を装着したり、歯を削ったりする必要が無いので、まず試してみると良いと思います。