ハグキの状態で、自己免疫疾患がわかった!!

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患者様の写真ではありません。書籍から引用しました。

 

初夏の頃、上下前歯のハグキが赤く腫れているのを心配した○○さんが来院されました。歯周病と診断して治療を開始しましたところ、少しづつ状態が改善して患者様は大変喜ばれましたが、ある時点から、ハグキが白っぽくただれたような感じに変化していきました。歯磨きすると血がでて痛くてたまらないと訴えられます。ケアに加えて、歯周病に対応した歯磨剤や塗り薬を処方しましたが症状に変化が見えないため、通常の歯周病ではないと感じ市立○○病院に精査を依頼したところ、「類天疱瘡の疑いあり」との情報提供をいただきました。類天疱瘡?????口腔外科の教科書で、その名前見たことあるけど???歯科医になって33年、初めて遭遇する病名でした。
「口腔粘膜疾患の診かた」という本で、類天疱瘡を調べてみました。

類天疱瘡は、粘膜の基底膜部の接着が脆弱になり、比較的大きな水疱を形成するまれな自己免疫疾患である。口腔粘膜に発症する類天疱瘡は、60歳以上の年齢で発症しやすい。他の粘膜(眼、生殖器、鼻咽喉、食道、咽頭)にも水疱を形成することがある。
水疱を形成する疾患とされているが、ほとんどの場合では摂食や外傷により水疱は破れて剥離し、その後は難治性びらんとなる。つまり、時期によって症状が変化する疾患である。臨床所見としては、剥離性歯肉炎、びらんとして認められることが多い。多形滲出性紅斑や扁平苔癬との鑑別が難しい。
実際の鑑別診断には臨床検査が必要である。
びらんの範囲が狭く軽症であれば、副腎皮質ステロイド(ケナログ等)の塗布で長期観察を行う。範囲が拡大したり他の粘膜や皮膚にも症状が発現すれば内服治療になる。

上記の解説に表れた剥離性歯肉炎とは、主に唇側の上下前歯のハグキの上皮が剥離して露出した組織が軽度の刺激でも出血、びらんを呈することで、灼熱感や、摂食時痛がある。原因として自己免疫疾患、アレルギー、ホルモン異常、ストレス、感染などが挙げられる。
多形滲出性紅斑は、薬剤もしくは感染症などが誘因となって免疫異常をきたし皮膚と粘膜に重い組織障害を生じる。口腔粘膜に限局するものは軽症型で口唇・舌・粘膜に紅斑、水疱、びらん、潰瘍などの多彩な病変を呈する。
扁平苔癬は白斑を主症状とする慢性炎症性角化病変で、灼熱感や接触痛を伴う。その60%が女性で40歳以上に多い。細菌やウイルスの感染、薬物、金属アレルギー、ストレス、自己免疫疾患が原因とされるが明らかではない。

以上の記載でおわかりのように、口のなかに現れる粘膜異常は自己免疫疾患や感染症、皮膚や内科疾患の先触れであるかもしれません。口の中の病変に気付き早期に対処することで、全身的な皮膚症状や粘膜症状の発現を阻止することが出来ます。歯科医師がおくちのなかを丁寧に継続的に診ることで、変化に気付き、他科紹介をすることで、患者様自身もわからない隠れた病気を見つけることが可能といえます。絶えずアフタ性口内炎が出来る患者様が、血液検査で自己免疫疾患の傾向ありと診断された例もあります。初期の癌がみつかり早期対応で事なきを得た例もあります。むしばや歯周病の症状がなくても、定期的に歯科検診を受ける必要性があるといえるでしょう。

味覚障害は、 歯科?内科?耳鼻咽喉科? 神経科?神経内科?脳外科?

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実は、私、味覚を失った経験があります。50歳を過ぎた頃でした。約1週間続きました。この状態が続けば、文字通り、味気ない人生になるのかと少し落ち込みました。でも、幸い、味覚は徐々に戻ってきました。とても嬉しく、ホッと安堵したことを覚えています。味覚消失の前日、歯科治療を受けました。私は麻酔の効きにくい体質で、自ら希望してたくさん麻酔をしてもらいました。どうもその時の麻酔が舌神経をも麻痺させたようです。だから1週間は長かったけれど麻酔が抜ければ元通りになり、歯科医師として貴重な経験が出来たことを今では喜んでいます。私の症状は、舌先の冷感&舌先の味覚消失で、麻酔による血管収縮が原因ではないかと考えています。さて、最近、味覚障害で悩む方が来院されました。時を同じくして、「2010年7月号日本歯科医師会雑誌」に味覚障害に関する記事が掲載されました。その記事を引用してザックリ説明いたします。

 

味覚障害の症状別分類

1)味覚減退 味が薄い・食事が美味しくない
2)味覚欠如、無味覚症 まったく味がしない・砂を咬んでいるよう・匂いもしない
3)自発性異常味覚 食事の味はわかる・治療した歯から酸っぱい味がする・いつも渋い
4)解離性味覚異常 食事は普通だがチョコレートの味がしない・味噌汁が薄い
5)異味症 醤油が苦い・チョコレートが苦い
6)味覚錯誤 塩が酸っぱい・梅干が苦い
7)その他 右あるいは左だけ、味がしない

 

年齢分布と男女の差

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女性は50歳代から急に増加
男性も50歳代で増加する80歳以降の受診は減っているが
潜在患者は多いと考えられる
加齢と共に発生していると思われる


 

 

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女性が、受診者の3分の2であるが、障害の重症度では性差がないことから、女性のほうが、気軽に受診していると思われる

味覚検査 

一般歯科ではできません。診療情報提供をして大学病院を紹介します。

高齢者と味覚障害

高齢者は目も耳も衰えて、匂いにも鈍くなりますが、本来味覚は比較的元気です。でも、加齢に伴い味覚障害者が増加するのには、いくつかの落とし穴があるのです。

薬剤と味覚障害

加齢すると不眠・高血圧・高脂血他で多種の投薬を受けるようになります。
5種類以上の薬を服用しているひとは結構多いのです。薬剤の多種服用により味覚障害を起こしている場合があります。

 

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唾液と味覚障害

味物質は唾液などに溶けて味覚が生じます。味覚障害者の唾液分泌量が少ないとの報告があります。加齢に伴い唾液の分泌は減少しがちですし、口渇を起こしやすい薬物があります。

 

全身疾患と味覚障害

腎不全患者は尿中にタンパク質が排泄される際に亜鉛も排泄されます。また食事制限もあって亜鉛摂取が減り体内亜鉛量が足りなくなって味覚障害を起こします。急性肝炎・慢性肝炎でも亜鉛の排泄がふえ消化管での亜鉛吸収能が低下して血清亜鉛値が減少します。糖尿病患者も重症度に比例して血清亜鉛値は減少します

 

全身疾患と味覚障害

さて最後に、味覚障害を疑ったら何科を受診するかという問いかけをしましたが、内科か耳鼻咽喉科が適切でしょう。味覚障害の原因はなかなか複雑なのですが、まずは亜鉛補充治療がメインになります。歯科ではこの薬は健康保険で処方できません。亜鉛補充については服用方法や服用期間など医師の指示に従うべきで、やみくもにサプリメントで摂取してはいけません。普段から亜鉛を多く含む食品をとるようにするのが賢明ですね。
また、全ての味覚障害が亜鉛製剤の摂取で改善するわけではなく、約6~7割の患者にとどまることも知っておいてください。

 

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風邪がやっと治ったと思ったら・・・ 歯が、痛い、痛い、目まで痛い!!!

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あまりの痛みに耐えかねて、話を伺う間も、患者様は頬を押さえて顔をしかめています。
すばやくおくちの中を診査して、レントゲンを撮影します。
痛い側にむしばや歯周病が無くて、レントゲンで上顎洞が白く映っていたら、それは急性上顎洞炎です。疲れていると、風邪がこじれて気管支炎や肺炎に移行しますよね。鼻風邪がこじれて、鼻とつながっている上顎洞(副鼻腔のひとつ)で細菌が繁殖し、急性の炎症を起こし膿がたまるのが急性上顎洞炎。 症状は、頬や目の下の強い痛みと鼻汁(びじゅう)・鼻づまりです。一般に片側にだけ発症し、発熱は軽微です。歯が原因ではなく鼻中隔湾曲などの要素があって発症することが多いので、耳鼻咽喉科へ紹介します。耳鼻咽喉科では、鼻汁を吸引後、抗生物質が投与します。きちんと服薬すると1週間前後で症状が治まりますが、体力を回復するために、しっかり睡眠をとることや休養することが重要です。

また、耳鼻咽喉科から歯科に紹介される患者様もおられます。
上記の場合と同じで、疲れている時や睡眠不足の時、風邪の治りかけの時に、突然頬が痛くなったり鼻汁が出て、急に鼻がおかしくなったように感じ、先に耳鼻咽喉科に行かれた場合も、歯科と同様レントゲンを撮影して上顎洞と歯根の関係を調べます。奥歯の根が上顎洞に近接していたり上顎洞に突き出ていることはよくあることですが、むしばや歯周病の治療を怠っていると歯根付近のばい菌が上顎洞で炎症を起こします。そういう状態がレントゲンでわかれば、この場合は歯性上顎洞炎という病名になります。原因は歯にあるわけで、投薬だけでは治りません。並行して原因歯の治療が必要です。つまり、耳鼻咽喉科と歯科のダブル通院になります。また、自分は慢性蓄膿症、またアレルギー性鼻炎であると思い込んでいても、片側に限っていれば、原因は歯に由来する慢性歯性上顎洞炎かもしれません。
上顎洞炎はレントゲンで簡単にわかりますので、気になる方は一度しらべてみませんか?
レントゲンの費用は1200円ほどです。

病院が苦手な人は多くいらっしゃいますが、何事も先手必勝です。顔面や頭部に異常を感じたら、歯科に行こうか耳鼻咽喉科に行こうか悩まずに、どちらかに早く行きましょう。

「風邪の華」「熱の華」の正体は 「口唇ヘルペス」

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食べ過ぎ飲み過ぎの時や夜更かしした時、強い日差しを浴びた時、心身がとても疲れた時にも同じような水泡ができます。病名は、単純ヘルペスウイルスに起因する「口唇ヘルペス」といいます。初めての感染は幼少期に大人と頬ずりやキスをしたというような軽い接触ですが、何の症状も出ないことが多いので気がつきません。症状がおきても口内炎を伴う発熱や軽い風邪程度ですんでしまいます。大人の口唇ヘルペスはほとんどが再発ケースで、男性より女性のほうがかかりやすいと言われています。ウイルスは体内から消えることはありませんので、神経や皮膚細胞の中に潜んで免疫力が弱ると再発を繰り返します。痒み・腫れ・水泡・ただれ・かさぶたの経過をたどり、治療をしなくても2週間程度で治ります。何度も再発する人は、唇に熱感やかゆみを感じた段階で軟膏を使うとよいでしょう。

単純ヘルペスは感染力が強いので、生活を共にしている人にうつさないために注意すべき事柄があります。
    1:水泡にさわらないこと 水泡のある状態でキスしないこと
    2:水泡に触れたらきちんと手洗いすること
    3:タオルは共用しないこと(洗濯は共用でよいが日光でしっかり乾かすこと)
    4:コンタクトレンズを唾液でぬらして装着しないこと
    5:水泡を破らないこと 痕が残ります

歯痛ではなく、おくちのなかの粘膜の異常や、あごや耳あたりの腫れ痛みの場合は、耳鼻咽喉科なのか、皮膚科か、はたまた歯科に行こうか迷いますよね。
目の下が腫れたり、鼻のわきが痛んだり、唾をのみこむ際に違和感がある場合、どの医者にかかればよいのか、悩むところですよね。

ブラキシズムのシリーズを一応終えましたので、これからは、このような微妙な疑問に対してアプローチしていきたいと考えています。

ブラキシズムの治療

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ブラキシズムの原因は習癖ですので、治療に際しての聴き取りを慎重にします。日常生活について詳細な情報の収集をします。情報収集の過程で、今まで考えてもいなかった習癖の再認識をしていただくことが多々あります。これは大変重要なことで、気付きがあるだけでその習癖を修正していただくことが容易になります。つまり、歯科医が治すというよりも患者様自身が治りたいから、原因が判ればそれを排除するだけのことなのです。思考と実践はシンプルになります。歯科医がいろいろ聴き取るのは興味本位ではないのです。まず、夜間ブラキシズムを認識している方には、就寝時のプレート「ナイトガード」装着が必須です。

 

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そして就寝前には以下のようなことに注意してください
    1:布団の中へは、極力悩み事や考え事をもっていかない
    2:リラックスしたイメージ、楽しい経験などを考えて休む
    3:高い枕は咬みしめやすくなるので避ける
    4:体位はできるだけ仰向けをこころがける 

日中ブラキシズムのある方は、食事の際に柔らかい食物も強い力で咬んだり、食事時間が短い、飲み込むのが早いといった傾向があるので、それを正しましょう。

また、極端に硬い物が好きな人は、注意してください。梅干の種を咬み砕くとか、ビーフジャーキーやスルメを毎日のように食べる習慣は避けたほうがよいでしょう。
咬む回数を増やして、ゆっくり丁寧に咬む、左右均等に、少しずつ咬み砕くようにしてください。

食事以外の時間で意識すること
    1:唇は閉じても、上下の歯は合わせない
    2:上下の歯を咬み合わせていることに気づいたら、離す
    3:唇や頬、あごなど口のまわりの力を抜く
    4:緊張時や集中時には、姿勢をよくし、肩の力を抜いて、深呼吸をする
    5:ストレスをためない
    6:重い物を運んだり、激しい運動をするときには特に注意する

以上、ブラキシズムについてシリーズで述べてきました。ブラキシズムは、むしばや歯周病に匹敵する重要な問題だと考えるからです。歯科医院に通院して、よくかめるようになったなら次にすることは、良い状態を維持することです。そのためには、今までは意識にのぼらなかったかもしれませんが、歯や顎関節に過度の力をかけないことがとても重要なのです。