老いない技術 1 咀嚼能力と脳の働きとの関係

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よく噛んで食事をすることは十分な栄養を摂るのに役立つだけでなく、全身の活動性や脳の働きを増すことが分かってきました。よく歩いて足の裏を刺激する、絵を描いたり手作業をするなどでは、脳への血液の流れがよくなって脳の老化を予防できますが、手足よりも脳に近い口を動かすと脳にはよりよい影響が現われます。手や指の細かな働きが発達している人間の脳では手指を支配している脳神経細胞の数が多いために、手指を働かそうとしますと多くの神経細胞を働かそうと脳の血液の流れは多くなります。

同じことは口や唇についてもいえ、繊細な感覚を持っていて、複雑な働きをする口や唇、舌を支配する脳神経細胞の数は手指のそれ以上に多いため、咀嚼や会話で口を動かすことは脳細胞を刺激し、脳血流を増やす近道となります。一般の人では指で蕎麦を潰してみても麺のもっている腰の強さは区別できませんが、歯で噛んでみると蕎麦の腰が強いか弱いかを区別できるほど、歯の繊細な感覚は優れています。また、汁物を食べたときに鰹だし、昆布だしのいずれが利いているかが分かるほど、多様な神経細胞が口の感覚に関わっています。これらは口といった狭い部位を支配している脳神経の数が手足以上に多いことになります。

 

このことから繰り返して咀嚼することは脳の神経細胞の活性化にとって大切ですが、最近の食事は軟らかくなって何回も噛まなくても喉に入るようになっているのが気になります。元神奈川歯科大学の斉藤滋教授は弥生時代から現代までの食事を復元して、復元食を食べるのに何回咀嚼しなければならないか、どのくらいの時間がかかるかを調べ、(図表15)のような結果を発表しておられます。現代人の食事では一食当たりの咀嚼回数が620回と少なく、弥生人の復元食の咀嚼回数3990回の6分の1、戦前の人の復元食の咀嚼回数1420回の2分の1しか噛まなくても飲みこめる軟らかな食事となったのです。

 

斉藤先生はネズミの脳をMRIで撮影して、食事を開始する前と食後1時間経った状態の脳とを比較しています。その結果、咀嚼することでネズミの脳が活性化すること、また人の脳についても咀嚼で神経細胞の働きが活発になることを見出しておられます。私が以前に勤めていた老人専門病院の歯科の先生方は考える能力と噛む力の関係について調べておられましたが、咀嚼能力のある人は考える能力が高いと報告しておられます。脳の老化を防ぐためには繰り返して噛むことが大切といえます。

 

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繰り返して噛もうとしても歯がなければ噛めません。そのためには高齢になっても歯が残っていることは大切で、歯医者さんたちは80歳になっても20本の歯を残しておこうとハチマルニーマル(8020)運動を展開しておられ、最近になるほど歯の数の多い高齢者が増えているといわれています。50歳以後になると失う歯の数が急に増え、70歳代前半では平均15本も歯を失っています。一般的に永久歯の数は32本ですので、70歳代前半で平均15本も歯を失いますとすでにハチマルニーマルに達しないことになります。したがって、60歳代前半で失った歯の数以上を減らさないことが大切です。

歯の喪失は若い人では齲歯(虫歯)が最も多い原因となりますが、50歳代以上の中年・高齢者では歯周病が最大の原因となります。虫歯も歯周病も多少は体質が関係して生じますが、いずれも生活習慣病の要素が強い病気です。したがって、毎日のこまめな歯のケア、特に何か重い病気にかかったときにも毎日の歯のケアを怠らないようにしたいところです。

 

十分に歯のケアがなされていますと咀嚼力が増すだけでなく、夜間就眠時に唾液が肺の中に流れ込むといった高齢者の不顕性誤嚥が生じても肺炎を発症しにくくなります。また、咀嚼力が増しますとたくさんの唾液が分泌され、食べた物の消化吸収がよくなり体力向上に寄与します。

 

噛める人と噛めない人の体力を調べた研究では、男性で噛める人は片足で立っていられる時間が18秒間もあるのに、噛めない人では9秒間しか立っていられないことが分かっています。女性では一般的に立っていられる時間が男性の約3分の2と短くなってしまいますが、一般的に体力の弱い女性についても噛める人と噛めない人との差は男性の差と似た傾向を示しています。握力についても噛める人は強く、噛めない人では弱いことが分かっています。

 

噛める人、噛めない人との間で個々の体力に差が見られますが、これら体力の総合能力も噛めることが影響します。また、うつ状態や認知力にも噛める、噛めないが影響しますので、咀嚼力を高めることは老化に伴う脳の働きの低下を防ぐことにも繋がります。いつまでも楽しい人生を送るために、命に関わる病気の予防に加えて、歯のケアのような身近でできる習慣にも心がけてください。

 

 

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以上の記事は、祥伝社新書出版「老いない技術」(著者:林泰史)を
参考にしました。

八木歯科における 妊娠期の歯科治療&口腔ケアについて Q&A

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Q: 妊娠中ですが、歯科治療はできますか。また、いつ頃がよいですか?
歯のエックス線撮影、麻酔、薬の服用は胎児にどのような影響がありますか?
A: jouhou1101_01[1]妊娠中でも治療はできますが、原則として応急処置以外の治療は行わないようにしています。必要であれば、妊娠中期(安定期)に治療を受けるのがよいでしょう。
歯のエックス線撮影では、防護衣着用により放射線の被爆量はほとんどありませんが、八木歯科では、絶対にレントゲン写真は撮りません
また、麻酔については、麻酔薬の量がきわめて少ないため、影響はないと思われます。ですので、治療をする際に麻酔が必要であれば、必ずします。
投薬は、胎児への影響が心配ですので、行っていません。
 
Q: 妊娠中に歯肉からの出血するのは、仕方がないと言われました。我慢するしかないですか?
妊娠中は、歯石だけでも取りに行ったほうがよいですか?
妊娠中は、何度も歯科健診を受けたほうがよいですか?
A: 妊娠中は、女性ホルモンの影響を受けたり、つわりでブラッシングが不十分になったりするために、歯肉の炎症を引き起こしやすい状態になります。基本的には、口腔清掃と歯石除去により改善されますので、口腔ケアをお勧めしています。ケアにつきましては、痛くないよう心がけています。費用も保険ですので、ご負担にはなりません。
また、妊娠中の歯科健診については、1回は受けるようにしてください。
 
Q: 妊娠前に親知らずは、抜いておくほうがよいですか?
A: 生えている位置、向き、咬み合わせなどの状態により、抜歯が必要かどうかを判断します。個人差がありますので、一概には言えませんので、ご来院をお勧めします。お口の中を見せてください。
 
Q: 歯周病になると早産になりやすいのですか?低体重の子どもが生まれやすいのですか?
A: 妊娠中の女性のうち、歯周病の人はそうでない人に比べて低体重児を早産する確率が高くなるという報告があります。歯周病菌が子宮の収縮に間接的に働きかけ、その結果として子宮頚部が拡張し、早産となると考えられています。実は、タバコやお酒も、よくないのですが、妊娠中だけでも止めることは出来ます。1年間の我慢ですみます。でも、歯周病を止めることはできません。お子様が欲しいのであれば、歯周病をコントロールする必要がありますので、ご来院とカウンセリングをお勧めします。
 
Q: 妊娠中にカルシウムをたくさん摂ると子どもの歯も強くなりますか?
妊娠中のカルシウムの摂り方によって、子どもの歯の生える時期は変わりますか?
カルシウムの摂りすぎもよくないですか?
A: カルシウムをたくさん摂ったからといって、歯がすごく丈夫になるということはないようです。歯の栄養のためにはカルシウムだけでなく、タンパク質、リン、ビタミンA・C・Dの栄養素を含む食品をバランス良く取ることが大切です。ちなみに、妊娠中に必要なカルシウムの所要量は、1日1,000㎎程度とされています。偏食がなければ大丈夫です。一日三食、きっちりと、ゆったりと、食べてくださいね。
 
Q: 妊娠すると歯が弱くなると聞きましたが、本当ですか。どうしたらよいですか?
A: 妊娠したからといって、歯が弱くなることはありません。ただし、食べ物の好みが変わったり、食欲が出たり、あるいは吐きもどしがあったりして、虫歯や歯肉の炎症を引き起こしやすくなります。「食べたら磨く!吐いたら磨く!」これで随分変わってきます。一人で悩まずに、出産・育児経験豊富な、八木歯科スタッフとお話しませんか?
 
Q: つわりがひどく歯ブラシを口にすることができません。どうしましょう?
A: 大変な問題です。とりあえず、ガーゼで歯を、ゴシゴシとこすってください。
小さめの歯ブラシに替える、また歯磨剤の種類を変えるなどしてみてください。それでも無理なら、こまめにうがいするようにしてください。つわりは2、3か月で終わりますので、その期間はあまり神経質にならず、調子の良いときに磨く程度でよいと思います。出来ましたら、八木歯科へのご来院を、お勧めします。
 
Q: 顎関節症は出産に影響ありますか?
A: 顎関節症は、出産に悪影響はありません。しかし、周産期には靱帯がゆるむことと、分娩時のくいしばりのため、顎関節症の既往がある場合は出産によって顎関節に悪影響を及ぼすことがあります。出産時にプレートを装着することをお勧めします。

八木歯科における 授乳期のお子様のついて Q&A

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Q: 母乳で育てていますが、麻酔や薬の服用をした場合、授乳をしてはいけませんか?
A: 歯科治療の麻酔も薬も、基本的に大丈夫です。薬の種類によっては服用の仕方に指示が出る場合がありますので、歯科医の指示に従ってください。
 
Q: 夜泣きがあるので母乳をあげています。虫歯になると聞きましたが、本当でしょうか?
A: 歯がはえてから、母乳を飲ませながら寝てしまうと、前歯がむしばになりやすいのは本当です。
 
Q: 1歳6か月になりますが、頻繁に母乳を欲しがります。虫歯になりますか?
また、断乳が遅れると虫歯になりますか?
A: jouhou1101_03[1]母乳を欲しがる間は無理に断乳する必要はありませんし、母乳が原因でむしばになることはありません。ただ、乳首を吸う時期から、離乳食をスプーンで食べる時期に移行する過程において、唇や舌の機能が進化するので、時期にみあった成長は遅れることになるかもしれませんね。
 
Q: 哺乳瓶の乳首に幅広のヌークを使うほうがいいのですか?それはなぜですか?
Q: 哺乳瓶の乳首の種類によって口のまわりの筋肉は変わりますか?また、どれを使うとよいですか?
A: 哺乳瓶の乳首の形態による差を歯科学的観点から研究したデータはないようですので、 わかりません。一般的に、口腔内で安定する形であること、穴のサイズは、乳児の吸啜能力に合わせて、おおむね一回の授乳時間が10ないし15分程度となることを目安に選択するといわれています。
 
Q: 哺乳瓶の使用は歯のことを考えると、いつ頃までがよいですか?
A: コップを使えるようになる1歳から1歳6か月を目安としてください。コップを使った時はおもいっきりほめて、コップへ切り替えていきましょう。コップは大人用ではいけません。お口の大きさに見合ったものを選びましょう。ストローはあかんよ!!!
 
Q: 「哺乳瓶う蝕」って何ですか?
Q: 哺乳瓶でジュースを飲ませてもよいですか?
A: jouhou1101_02[1]砂糖を含んだ飲み物を、哺乳瓶に入れて乳児に与える習慣によって生じる虫歯のことを 「哺乳瓶う蝕」といいます。特に就寝時に与えていると虫歯が重症になります。前歯が何本も同時に重度の虫歯になり、通常は虫歯になりにくい前歯の裏側まで虫歯となるのが特徴です。
ジュース、スポーツドリンク、乳酸菌飲料は大量の砂糖を含みます。100%果汁のジュースも果糖を含むため、哺乳瓶では飲ませないでください。

八木歯科が逆に質問したいです。ご質問した保護者の皆様、実際に果物を絞ってジュースを作ったことありますか?
めっちゃサラサラで甘み薄くて、飲んだ後、スッキリですよ。
それでも、寝る時に哺乳瓶で飲ませたら虫歯になるんです。
どうぞ、寝る前には、湯ざましか、ほうじ茶か、麦茶でお願いします。
虫歯になったら、治療が必要ですよね。あなたの大切なお子様は、注射をされて、ガンガン削られるのです。虫歯をつくらないために、歯並びが歪まないように、八木歯科にご来院ください。(熱く、語ってしまいました・・・・・)

 
Q: 1歳6か月ですが、牛乳だけは哺乳瓶でしか飲みません。どうしたらよいですか?
A: 1歳6か月であれば、問題ないのではないでしょうか。そのうちコップを使うようになると思いますので、気長に待ちましょう。ご心配なら、予約をお願いします。
直に、お子様を拝見させて下さい。

鼻呼吸の大切さ

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最近、アレルギー性鼻炎などの理由から口呼吸をしている子どもを多くみかけるように感じます。一度口呼吸に慣れてしまうと癖になってしまい、鼻閉は改善しているのに、鼻呼吸に戻らないことが多いように思います。また、母親が呼吸の大切さを知らず、こちらから指摘して始めて「ああ、うちの子、そういえば、ポカンといつも口あいてます。」と気づかれることも、よくあります。良い呼吸は、集中力を高めてくれますので、成長期にしっかりした鼻呼吸を習得しましょう。

Q: いつも口をポカンと口を開けていますが、どうしたら閉じたままでいることができますか?
Q: 口を開けっ放しにしていると、どんな影響があると考えられますか?
A: jouhou1001_02[1]慢性的な鼻炎などで鼻づまりがあり、口呼吸しなければならない場合もあるでしょうが、鼻づまりが治った後も、口呼吸の方が楽であるために、そのまま癖になっている子どもも多くみられます。鼻に新鮮な空気が送られなくなるために、ますます鼻のとおりを悪くなるという悪循環も生じます。
子どもには、口を開いているのが当たり前ではなく、閉じて鼻呼吸することが正しいことを教えてください。口うるさくならないよう、部屋のあちらこちらの目につくところに、子ども自身が書いた口唇の絵を貼っておくのもいいかもしれません。

口腔内への影響としては、

  1. 前歯部に歯肉炎が生じます。
  2. 前歯が乾燥して、唾液のう蝕予防作用が得られないために、前歯だけに虫歯ができることがあります。
  3. 口唇は前歯が出てくるのを防いでいるので、出っ歯の一因になることもあります。
  4. 舌の位置が低くなることにより、顎の成長発育に影響を及ぼすこともあります。
 
Q: 口呼吸を防ぐためにおしゃぶりをするとよいと聞きましたが、与えた方がよいですか?
Q: おしゃぶりを与えるとしたらいつ頃からがよいのでしょうか?
Q: 乳首の形や大きさがいろいろありますがどれがよいのでしょうか?
A: jouhou1001_01[1]おしゃぶりが鼻呼吸やアトピーの予防によいともいわれているようですが、現時点では科学的証明はなされていません。その一方で、2歳を過ぎてもおしゃぶりをしている子どもたちに、指しゃぶり同様の歯列不正の発現率が高くなるという研究結果が出ています。やめられなくなって困るということもあるようですので、歯科医の立場からからは、お勧めしません。
しかし、子どもが公共の場で泣いて困った時に、おしゃぶりがその子と母親を救ってくれる場合は別かもしれません。使うならば、短時間に、上手に使ってください。
 
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以上の記事は、クインテッセンス出版「歯育て支援Q&A」を
参考にしました。

秋は乳歯外傷の増える季節です

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Q: 乳歯の外傷は永久歯に影響がありますか?
A: jouhou0901_05[1]永久歯の歯冠は早い時期に完成するため、乳歯の外傷は多くの場合、永久歯への影響はないと思われます。しかし外傷の程度が大きい場合は、永久歯の変色や変形、萌出異常などがまれにみられることがあります。6歳ごろに、片方の前歯だけなかなか生えてこないといった場合は、矯正相談を受けてください。
 
Q: 転んで歯を打ちました。すぐに歯科医院に行ったほうがよいですか?
A: jouhou0901_04[1]ごく軽度の場合は様子をみてもいいですが、原則的にはかかりつけ医に診察してもらってください。
まずお子さんの「歯のぐらつき」と「位置の変化」をみてください。歯の位置が変わらず、ぐらつきが少しの場合(振盪)は、しばらく経過を見ていいと思います。動揺が大きい場合(亜脱臼)や歯の位置が変わった場合(不完全脱臼)はすぐにかかりつけの歯科医を受診してください。歯肉からの出血が多い場合や、歯と歯肉が一緒に動いている場合は、歯槽骨骨折が疑われるため、ただちに口腔外科を受診することが望まれます。
わからない場合は、まずは近くのかかりつけ医にご相談ください。
 
Q: 以前、転んで打った歯の色が変わってきました。歯科医院に行ったほうがよいですか?
Q: 色が変わった場合、生え変わりに問題は起こりませんか?
A: 外傷により歯の神経(歯髄)が切断され、壊死、壊疽を起こしているものと思われます。一度歯髄が死んでしまった場合には回復しないため、早急に歯内療法(歯の神経の治療)を行う必要があります。歯が変色したまま放置すると感染を起こし、膿瘍を形成し、永久歯の形成や萌出に障害を与えることがあります。そのため、歯の変色がみられた場合には急いでかかりつけ歯科医を受診してください。
 
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以上の記事は、クインテッセンス出版「歯育て支援Q&A」を
参考にしました。